高電圧発生器の実験(3)


  ● 高圧危険! 実験される方はご自身の責任において実験してください。感電事故・電波障害等について、当方は一切責任を負いません。



  (1) 昇圧整流器の作成: 高圧危険!


  11.(3)の コッククロフト・ウォルトン回路の昇圧整流ユニット(6段)は、ダイオードとコンデンサーの耐圧に問題があったので、さらに高耐圧のものに交換して作り直した。(イグニッションコイル電源(max12kV)の場合、電圧ピークが偏るので、コンデンサーの耐圧は 12kV×2=24kVで 25〜30kVは必要。 ダイオードはそのまま12kV以上であれば良い。 一方、フライバックトランス電源は、20kV以上と高圧過ぎて部品を壊すので、使ってはならない。)
  部品は、適当な国産品が手に入らないので、中国製の物(アリエクで購入)を用いて、アクリル板に組んだ。 コンデンサーは互い違いにアクリル板の表と裏に足が来るようにし、ダイオードはφ5×φ3のシリコンゴム管に入れて、スパークが飛ばないようにした。 出力の先には、5W10MΩの抵抗を3個直列に入れた。 蓄電器は 4kV0.01μのコンデンサーを18個直列(=556pF)とした。 マイナス(−)出力の昇圧整流板は、ダイオードの向きをすべて逆にして作成した。

  高圧電源には、11.(2)サイリスタ式イグニッションコイルを用い、テスター(CX506、SANWA)の高圧プローブ(30kV)を用いて出力電圧を測定し、 + の昇圧整流板で +28kV、 − の昇圧整流板で −27kV となった。 電源パルスは 偏っているので、それぞれ片側のダイオード・コンデンサー・ペアのみが利いて、3倍 + α の昇圧となる。
  + と − の昇圧整流板に 同時に入力した場合、電源のパワー不足のため、それぞれ15〜18kV程度にしか上がらず、そのスパーク(↓左下)も 3cm(約30kV)程度だった。

  


  (2) 高電圧測定器の作成:

  @ 〜50kV用:

  10kV以上の高電圧では、その静電気の影響により、デジタル・パネルメーター等の測定器は壊れて使えない。 そこで高抵抗と アナログメータを用いての シンプルな回路となる。 高圧プローブに、10W500MΩのP型抵抗(中国製、5%、結構太い、l=7cm)2本を直列(=1GΩ)にアクリル管(φ16mm×φ12mm×40cm位)の中に入れ、50μAの電流計をつなげて、そのまま読みの値で kV とした。(0−50kV) また 極性反転スイッチを付け、−方向も同様に測れるようにした。 ( I = 50(kV) / 1000(MΩ) = 50(μA) )

   

  A 500V微小電流用:

  500Vまでの低電圧の場合は、秋月の電圧計キット(入力インピーダンス 推定10GΩ、 * まだ LCD、LSI、基板のみを 売っている)を用い、たとえば ガイガー・カウンターの印加電圧(”写ルンです”のトランスなど)を測れるように、高入力インピーダンス用として作ってみた。 入力部の抵抗は、 100MΩ(5W)を先頭に、順次 10M、1M、100k、10k、1.1k、11Ω とした。
  これで、LD712 ガイガー管の500V電圧を測ってみて 値が500Vよりも低すぎた(≒340V)ので、 入力抵抗の先に 1GΩ(5W)を外部に追加したが、それでも 400V強と、やや低めの値だった。
  (40.の自作のガイガーカウンターは、LND712への印加電圧は450〜600Vの範囲とされ、マントルの測定により、PIC出力のVRを最も多くカウントする所に調整してある。 また、ストロベリー・リナックスのUSBガイガーでは さらに低く測定され、100Mで 62V、1GΩで 320V。)

  


  (3) IGBT駆動イグニッションコイルの作成: 高圧危険!


  11.(2)の サイリスタ式イグニッションコイル(一次:DC3Ω)は、10年以上前に作ってまだSCR(400V10A)が壊れていない堅牢な高圧電源。 ただし、負荷が増加すると サイリスタの転流がうまくいかず 暴走することがある。(SCRは A−K間の電流が強制的に0になって 電流が止まる仕組み。整流していないオルタネーターのように入力が交流の時は、負になったタイミングで停止する。)
  そこで、DC電源入力で、確実にON−OFFを制御できる IGBT を用いる。 ただし IGBT は、SCRの4層構造にCMOS膜を付けたゲート構造なので静電気に弱く、11.(2)のように イグニッションコイルの共通アース(−端子)をコレクタにつなげると 一発で壊れる。 ここでは、多くの自動車やバイクの高電圧発生回路のように、コンデンサーを介して IGBT のコレクタをつなげて、放電するようにする。 イグニッションコイルには、トヨタ・デンソーの一次:DC≒0Ω の低抵抗品を用いた。

  DC電源は、トランスレスの2倍圧整流回路で行ない、100VAC入力で、×2・√2倍の 約270V 程度になった。 これを 10μF(耐圧250Vしかなかったので、4つ使用)で400V程度のMFコンに充電させ、IGBT(1100V、60A、 GT30J110SRA)で放電させる。 IGBT への印加電圧は、555発振回路で 尖頭値 13V(15VでIGBTの抵抗値が最も低くなり、理想的。12V以下になると抵抗が大きくなり発熱する。)、デューティー比 7%くらいの 175Hz を、33Ωでゲートに入れた。(555はバイポーラの物で、最大定格が16Vであり、電源15Vでクリアしている。)

  結果は、そのまま整流して 11kV、 (1)の 昇圧整流器に入れて 37kV (≒入力の3倍強)になった。 IGBTに直列に入れた抵抗 Rc(10W10Ω)を取ると 41kVにもなる。
  一方、IGBT を通る入力は、平均電流120mAで 30Wくらい。 IGBT は ほとんど発熱しない。 発熱の大部分は2倍圧電源の抵抗部となる。

 

  


   § (オマケ):  プラズマボール(12V電源、秋月電子) と ミニ・テスラコイル(15V、24V電源、 アリエク)

  どちらも高周波の高電圧が発生し、ネオン球や 冷陰極管 が光る。

 


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